2012年5月31日木曜日

「蝉しぐれ」で湯野浜温泉を青年の苦悩と恋の物語の舞台に選んだ藤沢周平


「蝉しぐれ」で湯野浜温泉を青年の苦悩と恋の物語の舞台に選んだ藤沢周平

「衰浦は小さな港を持つ漁師村だが、それよりも村はずれにある十軒ほどの
湯宿で知られている村である。波がくだける磯とその先の長い砂浜、松林、
そして海から上げたばかりの魚の評判がよく、衰浦の湯宿はむかしから
家中の家族の者が湯治に訪れる場所だった。」
藤沢周平「蝉しぐれ」より


山形県にある湯野浜温泉は、その字が語るように海辺に面した温泉地です。
出羽富士とも呼ばれる鳥海山の美麗さと夕日、日本海の波音と松風の
絶え間ない海辺の温泉地として人気があります。
その歴史は古く、平安時代に海辺で亀が温浴しているのを
発見したことに始まるともいわれています。
その名残か、「亀の湯」とも称されることがあるそうです。

藤沢周平は、小説に山形県を登場させることが多く、
夫人をがんで亡くしてから執筆した「蝉しぐれ」や「たそがれ清兵衛」には
海坂藩という小藩(現在の鶴岡あたり)が舞台となっています。

豊かな自然が息づき、日本海の海岸近くまで山々が迫る風光明媚な環境は
登場人物の心情を描写する舞台として重要な役割を果たしています。

主人公の目線に立って、皆さんもぜひ読んでみて下さい。

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